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配偶者居住権とはどんな制度?

「配偶者居住権」という権利・制度が創設されました。

その名のとおり。配偶者が居住することのできる権利、と書きますが、いったいどのような内容のものなのでしょう。

名古屋市中区(栄駅すぐ)にある相続あんしんサロンがわかりやすく解説いたします。☝

目次

例えば、こんな事例があります☝

 

ご主人Aが先日亡くなりました。のこされたご遺族は、妻B・子供C1人です。実は子供Cと亡き父Aは生前から疎遠で仲が悪く、こないだ子供Cから母に対して、「家は売却して換金したい。母には違うところ(老人ホームなど)に引越してほしい」と言われてしまいました。

この場合、母Bは、本当は住み慣れた家で当然にこれからも住んでいきたいと考えていたのですが、そうもいかなくなるのでしょか?

 

☝ いえいえ、絶対に従わなければならないというわけではありません。

母Bと子供Aは法定相続分としては2分の1ずつの権利がありますので、子供Cがあまりに無茶なことをいうのであれば、その法定相続分のまま家を共有で取得する方法もあります。(相続登記で名義を2分の1ずつにする。)

また、子供Cにすべて不動産は相続させることとしたのであれば、そのかわりに子供Cから母Bは、自宅の賃貸借契約(賃料を払って住み)または使用貸借契約(無料で利用できる)を結んで、住み続ける方法もあります。ただし、このような利用契約だけでは、子供Cが手の平を返して第三者に家を売却してしまった場合、その事情をしらない買主から出て行けと言われると出て行かないといけないリスクが伴いますので要注意です。

そこで、今回創設の配偶者居住権を取得する方法が母Cにとってとても良い方法と言えるかもしれません。

 

☝ 夫婦の片方が亡くなったケースでは、一般的には、残された側の配偶者は、そのまま住みなれた自宅で出来る限り住んでいきたいと考えるのが普通ですが、特に高齢化している夫婦のケースでは、高齢になったにも関わらず、知らない人だらけのコミュニティーでゼロから新たな生活設定をしてくことは、あまりに大変でエネルギーを使うこととなるため心身共にしんどく、また、他の生活拠点での家賃負担などが生じる場合は、経済的制約もあります。

要は、高齢化してから拠点を移すということは中々消極なことであるため、寝たきりや認知症でない限りはそのまま自宅で1人マイペースで過ごしていきたいという時代的ニーズが顕著になってきたわけです。

統計的にも平均的寿命の夫側が亡くなったあと、残された平均的寿命の妻は、それから5年~10年程度はこの世で生活をしなければならないという計算になるのです。

また、一般的に子供Cの立場の世代は、価値観が多様化し、仕事の場所も選べる時代となり、核家族化が進み、順当に生活できてきるに比例して、実家から離れ、経済的にも自立し、あまり実家の建物をそのまま維持することを必要としていないケースが増えているといえるでしょう。

さらに悪いことをいいますと、子供Cが母Bの同意を得ずとも、家の名義を法定相続分(2分の1ずつ)にする名義変更登記(相続登記)を子供C1人で(母Bの同意や協力は不要で)出来てしまうため(※法定相続分による相続登記)自分の持分を登記し、さらに、子供Cの持分2分の1だけを、母Bの同意を得ずとも売却できてしまうのです。(そのような共有持分だけを買い取るような不動産業者が今はトレンドとして存在しているくらいです。)

 

☝ このような時代背景、家族の生活様式や価値観の変化に伴って、高齢となった残された配偶者の生活拠点(=自宅の家)に問題なく住み続けられるような制度の必要性が高まったことから、「配偶者居住権」の制度が創設された経緯があるわけです。

 

そもそも配偶者居住権とは?

 

妻Bが相続発生時に居住していた亡き夫Aの所有建物について、妻Bが終身又は一定期間、その建物の使用又は収益を認めることを内容とする権利で、この「配偶者居住権」は、夫Aによる遺言(遺贈)や、夫A死亡後の遺産分割協議により取り決め(取得)することができます。

 

 配偶者居住権は2種類

 

① 配偶者短期居住権

一定の要件を満たしたうえで、建物所有者(ここで言う子供Cへ)当然に請求できる権利となります。故人の配偶者に限定していることや、短期的な期間設定の権利であるため、登記システムの設定がされていません。(第三者対抗要件としての登記がない=使用貸借契約も登記はありません)

なお、上記「一定の要件」とは、次のようなものです。

【要件】

亡き夫Aの生前の許諾(建物に無償で住める)はなくてよく、対象は相続人の中で配偶者(妻B)のみに限定し、亡きAの遺産分割によって、家(建物)の所有者が確定するまで、または、相続発生から6箇月を経過するまでのいずれか遅い日まで住み続けることができる。

なお、遺言による遺贈により家(建物)の所有権を取得した者がいる場合は(子供Cや第三者)、その所有者は相続発生後いつでも妻Bに対して、配偶者短期居住権の消滅の申し入れをすることができ、妻Bはその申し入れを受けた日から6箇月を経過するまでの間は、無料で建物を利用できる権利がある。

というもので、「短期」の配偶者居住権は、最低でも半年(+α)は無料で住み続けられることが保証されているイメージなんですね。

 

② 配偶者居住権

一方、通常の「配偶者居住権」は、ある程度長い期間設定で住み続けられる権利が保証されることとなるため、住み続けられる配偶者(妻B)は、ある程度大きな権利を得られることとなり、一方、建物所有者(子供C持分2分の1)は、配偶者居住権がなくなるまでは、建物の利用や売却に制約がかかるため、当事者間で相当な利益相反が生じる結果になる制度です。

また、その関連当事者への影響が大きいことから、配偶者居住権を取得した場合には、無条件にその権利を主張できるわけではなく、配偶者居住権の登記を行ったときのみ、その権利を他の第三者に対抗(主張)できることとなります。

よって、母Bは、子供Cとの間で、遺産分割協議により配偶者居住権があることを合意したものの、その登記を怠っていると、それを知らない第三者(例えば、子供Cから建物持分2分の1を買い取った不動産業者など)に対しては対抗(主張)出来ず、出てけと言われたら出て行かないといけなくなるということになってしまいます。

通常の(短期ではない)配偶者居住権を取得した場合は、すぐに建物所有者との共同申請で、配偶者居住権の登記を行っておくことをおすすめいたします。

配偶者居住権の登記とは?

 

配偶者居住権の登記は、建物所有者と配偶者との共同申請となるため(配偶者妻Bだけで出来るわけではない)あくまで建物所有者(子供C)の協力・合意がなければ行えないところに注意致しましょう。

例えば、亡き夫Aの遺産分割協議で、配偶者居住権に合意してくれなければ、そもそも配偶者居住権は取得できません。また、遺産分割協議の合意は何とか出来たが、なかなか登記手続きの段階で登記用の書類に判を押してくれない・・・などということも理論上は想定できます。

また、夫Aが遺言により配偶者居住権を書いていてくれた場合でも、いったん建物の相続登記(法定相続分2分の1ずつ)を行った上で、子供C(持分2分の1)に対して、子供Cの協力を得て登記を申請していくこととなるのが原則のため、結局、子供Cの協力がなければ登記も出来ないように思われますが、唯一、子供Cの同意や協力が一切なくても出来る方法があります。☝ それは

☝ 遺言の中で「遺言執行者」を指定(遺言執行者を妻B)としておけば、夫A死亡後の配偶者居住権の登記を行う際には、建物所有者側に必要となる作業はすべて、遺言執行者が代わりに行えることとなるため(子供Cの協力や判子も一切不要)遺言の作成と共に、必ず遺言執行者を指定(もちろん子供C以外の人で、妻B又は第三者専門家)しておくことがベストです。

なお、司法書士としての素朴な悩みですが、遺言執行者を第三者専門家にしておいた場合や、妻Bを遺言執行者に指定しておいたケースを考えた場合、妻Bも高齢のため、万一、夫Aが死亡したときに、妻Bが認知症になっていると、妻Bに判断能力がないため、第三者専門家の遺言執行者をして建物所有者(登記義務者)に代わって登記処理ができたとしても、配偶者居住権の登記権利者である妻B自身が認知症であるため、登記の委任自体を司法書士に依頼できないこととなり、登記手続き自体が出来なくなってしまうリスクがあるということです。

詳細はお気軽に、名古屋相続サロンにご相談下さい。☝

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☝ まとめ

 

配偶者居住権には2種類あります。

短期の配偶者短期居住権は、建物所有者に当然に主張できるため、相手配偶者の死亡後、少なからず6ヶ月(+α)程度は住まう権利が保証されていることとなります。一方、6ヶ月(+α)を超えて住まうことができないということでもあります。

そこで、通常の配偶者居住権を検討し、建物所有者の理解をえて、配偶者居住権の取得とその登記を行っておくと安心です。

ただし、子供と仲が悪くない場合や、子供の理解が十分に得られる場合は、配偶者居住権を利用しなくても、住み続けられる方法は従前通りありますので、ご家庭の事情・バランスに即して、配偶者居住権の利用を検討されることをオススメいたします。

また、生前対策・遺言作成にあたり、配偶者居住権の条項を記載していく場合には、注意点がいろいろありますので、生前対策・遺言作成を検討中の方は、どうぞお気軽に名古屋相続サロンへご相談下さい。☝

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